トラ車、かぁ。

「たぶん、俺、バカって言うか、アホなんだろうなぁ。」
「ナニを今さら・・・そんなの、ここに来た時から知ってたよ?」
「ちょっと欲しいモンがあるんだけどさ。それで悩んでるんだわ。」

メンソールに火を灯し、マンダリンのグラデーションに染まり行く初夏の
黄昏、東の空をぼんやりと遠く、きつねは眺めた。

それはフランスと日本の異色混血児、スコルパ・ヤマハ TY-S125F。


スコルパ


「お医者さんってのは、どうもよく分からない人種でねぇ。」

四半世紀に渡る活躍の末に、くたびれてオイル漏れを起こした我が愛車の
パーツを発注するべく訪ねたバイク屋さんに、それは眠っていた。

「仲間から吹聴されて、少し面白そうだとホイホイ買っちゃうらしい。
 ド初期の古いモデルだけど、慣らしも終わってないのに手放すそうだよ。」

既に還暦を過ぎたと思しきオヤッサンは厄介者だと言わんばかりに、
それへ向けてアゴを振ってみせた。






トライアルという競技は、高校生の頃から二輪に触れ続けて来たきつねから
見ても、たぶん相当にマイナーで不思議な世界なのだろう。
「スピードを競わないのに、扱い切る技術が必要」という点ひとつ取っても
他のレースとは異質なのに、それゆえにバイクが異様なほど小さくスリム。

「座るべきシートがない」「ガソリンが3リッター程度しか入らない」(!)
その二点だけ取り上げても、異形というか奇形というか、これほどまでに
奇怪なバイクは、「他のジャンルでは存在しないんじゃないか」とさえ思う。

でもこれ・・・岩手県民なら、意外に知られている競技なんだよね・・・。
日本でも稀有なイベント、「イーハトーブ・トライアル」の舞台だから。

「タイムを問わず、厄介なコースを、足を着かず、停まらず、クリアする」。
このシンプルなルールは、しかし乗り手に、曲乗りのテクニックを要する。


思い返せば・・・きつねは自転車少年の小~中学時代、徹底的に「曲乗り」を
追求する子供だった。

公園の階段を駆け降りて土手をジャンプし、前タイヤを上げたままどれだけ
長く走り続けられるか、足を着かずにどれだけドリフト出来るか、挑んだ。
月に何度も壊れタイヤが半年と保たないボロボロの自転車を前に、亡父は
ため息をつきつつ、最後は呆れたように笑うのだった。

「お前、大きくなったらトライアルをやれ。いや、いつかやるようになる。」


`15 6/10 御明神林道にて。


思えば今のヤマハ225も、毎秋放映されるTV岩手の「イーハトーブ特番」に
影響されて、「ああ、未舗装の山へと出掛けられたら、こんな凄い風景の中を
走ることが出来るのか!」と恋焦がれた末に、手元にやって来たものだ。


「寝かされていた期間が長かったから、あっちこっち要修理なんだけど。
 タイヤはそのまま、乗れるところまで整備して、20万でどうだい?」


そんな折、「きつねの実験機のカワサキ、良かったら良い値で買い取るよ?」
と、県北の師匠からメールが届いてしまった。

「とても実用にならない不器用な単車なのに、欲しがるなんてバカだよね。」
「ん?ニイチャンの恋した相手なんて、皆そんなタイプじゃなかったっけ?」


`15 6/7 とらみさん


そーいえば、そうかもね・・・とらみさん、あなたのように・・・。
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プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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