四半世紀トリッパー・その3 ・・・自分の心の声に、素直に・・・






彼ら自身や熱心なファンの間ではどうも「黒歴史」として冷遇されているらしい
(確かに異質・異端ではある)ナンバー・・・でもきつねは、昔から好きだった。


指先を湿らせ風向きを読めば、やがて訪れる雨も、そして向かうべき方角も
確かに見失うことはないだろう。


起用されたアニメの中のショベルFL改(!)を駆る主人公たちを目の仇にした
白バイ隊員のコード・ネームから、タイトルを頂いているけれど。

ホーンのアレンジにどこかシカゴの匂いを纏いつつ、トルクフルで疾走感の強い
メロディーに乗せられたこの一節だけでも、年季を積んだ単車乗りならきっと
過去の記憶からゾワッと呼び起こされるシーンが、幾つもあるはずだ。


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これは件の本家からバイクやパーツを引き取るべく、忙しい時間を割いてトラックを
出してくれた「セローの主治医」コマガタのオッチャンに差し出した「蔵出しモノ」の
ひとつ・・・おそらくきつねが生まれる前からあった、ティン・トイたち。


「ナンチャラ鑑定団に出せばいいのに!」と思う向きもあるかもしれないが・・・
アレは「上物レア物」の話で、こんな長年放置されたキズモノなど値が付かない。

ただし・・・世間では値が付かなくても、そういう物が純粋に好きなヒトにとっては
評価額と無関係に「アンティックで珍しいコレクション」として、喜んで飾ってもらえる。


実は他にもオッチャンの業務上で役立ててもらえそうなミニトレ系エンジンなんかも
いくつか提供したお陰で、快く二往復のサポートを引き受けてもらえたんだけれど。


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「好きなことや得意なジャンル、心から愛する世界でご飯を食べて行くのって
今のこすっからい世の中では、きっとなかなか難しいことなんだよね。」


ノッキングを半クラであやしつつ去って行くオッチャンの老ボンゴに首を下げて
振り返れば・・・そのやつれた姿を放っておけない、2台のタイム・トリッパー。

作り手のヤマハだって、当の昔にパーツのデリバリーなんか止めちゃったはずの
中途半端に古い彼らのことを、どうしたらいいんだろう・・・。


「気持ちが堂々巡りを繰り返した時は、思いついたこと・出来ることに従ってみる」。


これはたぶん趣味以外のことでも当てはまる、「解決の法則」なんじゃないかな。


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古いバイクと抱き合わせで直面させられた「オトナノジジョー」に囚われ、それでも心は
グルグルと悩んだり迷ったりするけれど・・・。

しかし時間を掛けて手を動かし汚した分だけ、目の前の一見埃まみれのボロバイクは
正直に素直に、その素性ゆえの輝きを取り戻して行ってくれる。

「再び走るために必要な要素は何?」「そのために欠けているもの、必要なものは何?」


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「キズだ」と思っていたものが、実はコンパウンドで磨いてみると消えてしまったり。
「サビだ」と思っていたものが、真鍮ブラシでこすりCRCで拭き取ると油汚れだったり。


手持ちの小道具やささやかなケミカルを使い、体力や時間とウェスの消費量に対し
正比例して、記憶の彼方にある「かつての美しさ」を取り戻して行くバイクたちは
きつねの揺れる心を十分に慰めてくれた。


「整備や維持まで手が回らなくとも、きみの気持ちと努力は伝わっているよ」とでも
言わんばかりに・・・ね。


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フロントフォークのヌケたオイルシール、擦動面とかタンク内に浮いたサビ。
取り戻した輝きの反面で、同じ分だけ問題も具体的に表われて来てしまう。


今のきつねの生活キャパとスキルでは荷が重く、遠からず手放すつもりの
「過去からのトリッパーたち」だけれど、こちらが見込んで渡す側にとっても
それらは確実に難しい宿題として、暗い影を落とすだろう。


黄昏にワックスを効かせて輝き、まるで色褪せを見せない艶やかな見た目に
ひととき安堵の溜め息をつきつつも、背負った気の重さは軽くなってくれない。


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冬を思わせる曖昧なカタチの暗い雲がいっとき途切れ、10月らしさを取り戻した
青空の広がる暖かな午後・・・。

埃に汚れたバケツの水を捨て、磨きの手を止め、きつねはセローで走り出す。

心の内に向かい奥へ奥へと掘り下げて、良き答えを見つけられなくなったら。
そのベクトルでの思考を打ち止めにし、心の外へと瞳を向けてみることにする。


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「俺は何故、バイクが好きなのか?」 「俺はバイクに、何を求めている?」

落ち葉を踏んで風と陽光を浴び、日影に土と季節の匂いを嗅ぎ取りながら。
その禅問答にも似た自問自答へと、セローは快活に明快に、答えてくれる。


「走っている、その瞬間瞬間の、躍動とトキメキと、いまを生きている手応え。」


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通い慣れた近隣の散歩コースで、ふと視界に入った脇道が気になって。
イタズラ心が湧いてリンゴ畑の傍らを突っ切り、道かと思しき道を進む。

スタンディングでパキパキと木々の枝を踏み、或いは頭を低めてかわし。

自身を試すように「これ以上は無理」と思えるポイントを目指して登り続けたら
やがてヒトの歩幅まで狭まった途端、目の前を逞しく駆けて行く「山のもの」の
美しさに心を奪われ、しばしエンジンを止めることになった。



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それは誇らしげに大きな角をかざし自在に森を走る、成獣の雄鹿。

きつねが躊躇した末にターンし損ねてスタックと切り返しに汗する目前
数メートルの場所を、大柄な体躯の彼は、悠然と大股に去って行った。


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「市街地からたった数キロの里山で、望み得ぬ光景を見た」。

うん、今日はそれだけでいい。それだけで、走った意味があった。
自分の価値観の主軸を、あらためて再確認することが出来たから。

俺は、やっぱり「直すことより走ることに喜びを見出すタイプ」なんだ。


「何のためにそのバイクを持っているのか?」を、見失ってはいけない。

「そのバイクは何のために存在するのか?」を、見失ってはいけない。


俺は、コレクターじゃない。 死蔵するより、活かす誰かへ渡さなければ。

きっと亡き従兄も親父も、それを望んでいるんじゃないかと思う。



「願わくば次に手にした誰かの暮らしに、ハッピーを添えて欲しい」と。
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tag : もの思い レストア 蔵出し ベルーガ MR50

プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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