ウワノソラ的な日々、5月も半ば。








・・・誰もが行きたがる、遥かな愛と夢の国・・・か。


まだ帰らぬとらみさんの身を案じつつ、ふと子供の頃の流行り歌を
思い出してしまいました。

旅立つ背中を見送ることはあっても、彼の地へたどり着いた者とは
誰ひとり逢ったことがない、曖昧模糊とした蜃気楼のような国。

老いたとらみさんもまた、最後の夢を叶えるべくそんな場所を目指し
去って行ったのかな・・・とぼんやり考えながら、今宵も勝手口の
扉を開けるきつねです。


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先日のブログで触れた「不思議な出来事」とは、こういうもの。


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彼女が深夜の網戸をこじ開けて出て行った、数日後のこと。

帰宅後の習慣となった近隣パトロールにも相変わらず収穫無く、
とらみさんの気配すら感じられない夜道をトボトボと買い出しへ。

ふと、通り沿いにある小さな稲荷神社の明かりに目を引かれて
顔を向けたのですが、その蛍光灯がいつもに比べ妙に明るい。

正確に表現すると、一瞬「あれ?LED照明に取り換えたの?」と
勘違いした程の、例えば切れる寸前の裸電球みたいな白さ。


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咄嗟に境内へ少し特別な空気を感じ、鳥居越しに心の中で
「こちらのねこの集会で、とらみさんを見掛けませんでしたか?」
と秘かに問うてみたのです。

もちろん稲荷神さんのお返事がダイレクトに胸に返って来るような
ことはありませんで、そのまま歩を進め傍らの路地へと折れます。


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そして・・・その神社の管理をされている隣家の裏手を抜ける際、
暗がりに四つ足を地に着けた生き物が、すっくと立っていました。

猫にしては大き過ぎる。じゃあ犬?いや、柴犬にしては足が長い。
じゃあ目の前の、背に赤毛を纏った美しい獣は・・・否、嘘だろ!?


街灯の明かりを背に立つ「それ」が何者なのか、小さな脳みそが
いきなり忙しなく判断に俊巡した釘付けの時間、たぶん数十秒。

逆光に読み取れない表情の「それ」は、見つめた瞳を逸らすように
やがて逆向きの茂みへ首を振り鮮やかに身を翻して跳ねました。

準備動作のタメが無いイルカのようにしなやかなハイ・ジャンプへ
鞭のように追従したのは、大きく長い黄金色のシッポ。

そう・・・冬毛が全て抜け落ちる前の、成獣のホンドギツネ・・・。


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盛岡は日本の県庁所在地としては稀なほど、四方を川に囲まれて
その名の通り周囲に森や林を蓄えた丘が小島のように存在する
「絵に描いたような片田舎」なんだけれども。

我がアジトが20時にはゴースト・タウンへ変貌する下町にあるとは
言えど、賢く用心深く滅多に人前には姿を現さないホンドギツネが
わざわざ出張して来ても良いようなエリアでは、決してありません。

何しろ休日の天候にさえ恵まれれば、春から秋までセローを駆って
嬉々として「未知の道探索」へ出向く自分ですらも、その美しい姿を
見掛けるチャンスは年に一回あるか無いか・・・なのですから。


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狐が稲荷神社の眷属となった経緯については諸説あるのだけれど。

ルーツはさておき、一千年の時を経て「お稲荷さんの遣い番」として
日本独自のスタンスを築いた事実は、どうも確かなことのようです。


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自分にとって気になるのは、しばし薄暗がりでこちらの目をじっと
見つめていた「それ」の、意思と意図な訳なんでありますが。

考えつくのは、以下の三通りになります。


① 「とらみさんは帰る(帰らない)よ」というメッセージを伝えに現れた。

② 「アンタの胸の内は分かった。あのコに伝えておく。」という伝達者。

➂ とらみさん自身がきつねに姿を変え、サヨナラを伝えに現れた。


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そのどれが真意だったのか、あの短い逢瀬では残念ながら自分には
読み取れなかったけれど。

ただ、その出来事を境に何故か不思議と胸に渦巻いていた憔悴は消え
自然と「あるがままを受け入れよう」という心境にシフトしたのです。

サイコだオカルトだ、と読み手が面白おかしく解釈するのは自由ですが。

「あのタイミングであの場所にホンドギツネが現れる」ということ自体、
自分の常識ではまずありえない奇跡、としか考えられませんから。


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長年の猫好きにだけ秘かに伝わる、「10才を過ぎた猫はある種の
神通力を持つに至る」という伝説を信じる他に、術はないようです。


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勤務に務める間も、手が空いた時にふと「今頃とらみさんは・・・」
と意識が上の空に向いてしまいそうな日々を連ねて。

それでも「いい歳のオトナなんだから仕事中は顔には出すな」と
ギリギリ自らを諫めて、都合9時間の拘束時間を乗り越えました。

しかしコレ、なにしろ精神面で二重生活を強いられるに等しい様な
暮らし方ゆえ、帰宅後のアルコールの効きもハンパなくて(苦笑)。

正直な話、風呂に入るのを忘れてベッドに倒れ込んだ日もありました。


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休日もアジトに居ると、開いておいた勝手口のドアが風で軋む都度に
いちいち「もしかして帰って来って来てくれた?」と振り向く位だから
長丁場となると、とてもじゃないけど神経が保たなくてね・・・。

多分「とーちゃんかーちゃんヨメコドモ、その家族の中にネコもいる」
的な環境で猫と暮らしている人では、この心境は理解して貰えない。

実質15年間(飼い始め当初の一年のみ亡母が在命だったため)、
オスメス一対一のパートナーとして日々向き合って来たヒトでないと
自分の喪失感や痛手の大きさは、分かって貰えないものと思います。


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失恋のような「居なくなったから感じる、無いものねだり増幅要素」を
客観的にジャッジし省きながら・・・それでも割り切れない想いを
抱きつつ。

曖昧な天気に終始した今日は自分の尻を叩いて愛車のブレーキの
エア抜きがてらフルードの入れ替えを行っておりました。


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特定の時代にだけ採用された「DOT5」という珍しい規格のフルードを
購入しに出向いた主治医のモンタナMCでは、今日もI間さんが忙しく
メンテナンス作業の真っ最中。

「俺にとって四月は、もう今月いっぱい区切りが着かない感じかな。」
と笑う彼に、「じゃあ愛機を点検に持ち込むのは改めて月末にて」と。


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惜しむ気持ちを断つように散る桜、そして入れ替わりに芽吹く森の緑。

とらみさん、あなたの無事の帰りを待つ想いに、変わりは無いけれど。
四季は人の心を待たず、暦の通りに移り変わって行くようです。

あの金色に澄んだ瞳は、どんな窓からどんな景色を、眺めていますか。
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テーマ : ひとりごと
ジャンル : 車・バイク

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プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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