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毎秋恒例・あかぎつねの北帰行 第五章 ~最果ての秋 或る朝の情景~








「たぶんそうだろう」と思ったけれど、やはり今年もスマホに
セットしてあった目覚ましが鳴る前に目が覚めた。

朝4:50、他の宿泊者を起こさぬよう昨晩揃えていた服を静かに
重ね着し、宿を出る。

流石に身体で押して行く訳にはいかないから、セルを回すなり
愛機に詫びつつ暖機タイム抜きで、そっとクラッチを繋いだ。


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水揚げした魚を扱うのだろう、一キロほど離れた建屋には既に
明かりが灯っており、時折り軽トラックが出入りしている。

自販機に「HOT」の表示が幾つか並んでいることに安堵しつつ
ブラックのボトル缶をふたつ求め、しばし身体を外気に慣らす。

大森の水温計がせめて50℃を指すまでは、待機させないと。


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騒々しいエキゾーストがなるべく周囲に轟かぬよう気遣いつつ
岬から国道へと駆け上がり・・・5:30、いつもの駐車帯へ。

潮風に舞うカモメのシルエットがようやく見分けられる明るさ。
闇が最後のグラデーションを引きつつある、街路灯も無い国道。

トランクに積みっ放しだった筈の安い三脚が無いことに気付き
小さく舌打ち。初物のカメラでは、手痛いハンデになるだろうか。


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いや、三脚を探す前から薄々気づいていた。今日は望めない、と。


大間は「日本海側に沈む夕陽」と「太平洋から昇る朝日」の両方を
ひとつの町に居ながら見られる、おそらく稀有な土地のひとつ。

どちらを撮るにも、程良い時間。それが10月半ばにここを訪ねる
大きな理由のひとつだ。


但し天候だけは、誰もどうすることも出来ない「賭け」だけれど。


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どんなに北の大地の島影が冴えていても、東に雲を敷かれたら
意図したものが撮れる訳は無かった。

でも不思議と、思っていたほどの落胆を感じない。

心のプライオリティが「この街で夜明けを眺めること」に
既に移っているから、なのだろう。

今年も潮騒の中、その瞬間を確かに迎えた。それだけでいい。


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生きて行く 道連れは 夜明けの 風さ  蒼い 夜明けの 風さ


ワルツの旋律の余韻に、ぬるい二本目のコーヒーを飲み干した。

宿の皆はそろそろ目覚めた頃だろうか。来た道を戻ろう。


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前夜の晩飯の際、「脇野沢まで降りフェリーで津軽半島へ渡る」と
話していた関東ナンバーの御夫婦は、皆の忠告通り早起きだった。

自分より概ね一回り齢上の二人、しかもGL1800を乗り倒している
旦那さんはさておきダイナを駆る奥方は、それが信じ難い痩身。

「へヴィ級の単車でまさかりの刃を全線・・・かなりの試練だよ」
と誰もが心配の言葉を発するも、前日は恐山に詣でたそうで。

まあ、あの県4を走り切れたなら海峡ラインもイケる腕はあるか、
というところで昨夜の宴は「お開き」となったのだった。


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旅荷をロードスターに詰め込み宿を出た時、岬の公園を降りて来る
S姉さんが笑顔で手を振ってくれた。


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前夜、ひとり居住まい正しく静かに夕餉を終えた彼女に対して声を
掛けるべきか、秘かに少し戸惑った。

何かしらの事情で、誰とも関わりたくない旅路なのかもしれない。
いや、旅慣れぬ人見知りで上手く会話に入れないだけかもしれない。

二人だけになった朝食の席、思い切って声を掛けてみると・・・。

実は後者も後者、北海道を家族旅行で回った後にふと思い立ち
「生まれて初めてのひとり旅」を試みたのだ、という。


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「自分のためだけに旅先を決めて宿も取る、それだけでもう新鮮。
こんなに自由でワクワクするものなのか・・・って、面白くて。」

今までほぼひとり旅の経験しかないきつねからすると、正に真逆。

でもねSさん、俺も未だにそう。だからずっと、ひとり旅なんです。

この土地に対して多くのヒトがそうであるように、マグロと恐山しか
予備知識のなかった彼女は、しかし「自分だけの下北半島」を得た。


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青森市から再び海峡を渡って空路で「日本の真ん中」へ帰るという
Sさんに、「次は是非レンタカーを借りて」と念を押した。

それとも愛車レクサスなら、長い陸の旅路も苦にならないだろうか。

下北は大きく、またクルマやバイクでなければ巡れない場所も多い。
地図に隠れた魅力を拾い、眺めたい景色で停まる自在さが欲しい。

「それ」があまりに多いからずっと通っているのだもの、きつねメ。


※お気付きの方もいらっしゃるかな。前回までの「鍵コメさん」が、
  実はこのS姉さんだった訳です。


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「まさかりの刃」を延々と南へ辿る海峡ラインへ対峙する前にひとつ、
いつもの立ち寄り処でロードスターのエンジンを切った。

大間と佐井の境にある願掛レストハウス、昨秋は化粧直しの最中で
お邪魔することが出来なかったのだが・・・キレイになったねぇ。

「なに、やっぱり今年も独り?早く女の子連れて泊まりに来なさい。」

何せ乗りつけるクルマがクルマなだけに既に顔を覚えられて久しい
オカミサン、俺をからかいつつコーヒーを淹れてくれた。


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「ここでテント張って行ったツーリングの男子は、相当な確率で翌年
彼女やヨメサンを連れて来るのに。」

「多分ウチに泊まらないから兄さんには御利益無いのよ、きっと。」

この材料は青森ヒバだろうか、お茶代代わりに通算10コ目ぐらいの
南京錠を購入する。

マーカーペンをお借りして裏面に書き込んだ願いごとは・・・今さら
望む気もさして無いから、むしろ年中行事的なものなんだけど。

「良縁」ってナンだろ、とヘソマガリなきつねの尾が風に揺れた。


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一歩踏み出してこそ、その神通力は背中を押してくれるのだろう。
想い人の有無を問わず、そのためのレシピが何か一つ欠けている。

もともと無かったのか、或いはどこかでつい落っことして来たのか。

抜け落ちたピースのカタチ・・・それを思い出すにはあまりにも
月日が経ち過ぎてしまった。

まあナンだ、「いい塩梅によろしく頼んます」と水平線に向けて
首を下げて二度手を叩く。

・・・しかし、隣り合ったキーホルダーにつらつら目を走らせると
「商売がうまく回りますように」 「○○高校に受かりますように」
てな随分アサッテのお願いもブラ下がっていて、つい苦笑い。


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抱き合った男女の顔、か。

昔のヒトは相当イマジネーションが豊かだったのね・・・。


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願掛け岩を降り切り漁村の集落を過ぎれば、いよいよ本日の
メイン・イベント。

ツールド・コルスそこのけ、50kmを楽に超える過酷なターマック
ステージが待っています。





※上記動画は参照イメージです(きつねとて命は惜しいんだい)。


昨冬、なけなしのボーナスを投じて噛ませたディレッツァDZ102の
実力たるや如何に? ・・・あ、ブレーキパッド・・・(謎略)。
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鍵コメントS様へ。

アハハ、S様お久しぶりです。

Sさんの姿、元寸の画像でも顔立ちが特定出来ない
ものでしたのでそのまま縮小して載せてしまいました
(御迷惑であれば削除しますのでメッセージ願います)。

自分も無意識のうちに何処かで「こうであるべき」とか
「こうでなければいけない」というテンプレートに自身を
嵌めているようで、傍から見ると相当頑固な人間に
映ることがあるようです。

ただ、そのことが原因で苦しむこともある半面で実は
破綻せず手堅く生きて来られた理由になっていたり、
「自分らしさ」を形成する幹になっていたりもする。

要はバランスの支点を何処に置くか、なんでしょうね。

>自分が一番喜ぶ生き方
こういう捉え方、言葉を変えるなら「偽りのない本音」
「素直な気持ち」って、とても大切なことに思えます。
「誰かから見た自分像」「誰かに求められる自分像」を
意識し過ぎると、心がとても窮屈になってしまう。

自分に許されること、自分で出来ることを手探りする。
悪くないんじゃないかな、面白いんじゃないかな。

人生は一度きり、誰にも迷惑が掛からない範疇なら
しがらみに縛られず、好きなようにやってみた方が
有意義で楽しくなるはずだ、ときつねメも思います。

>パートナーが見つかると良いですね。
居た方が良いんだか、居ない方が自分らしく暮らせて
むしろ幸せなのか。
ここまで独りで生きていると、日々自問自答です。
プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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