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全てはホトケのお導き、ってかい。 ~彼岸明けの日は、冬眠明けの春~







予報通りの青空冴えた朝、気温が上がるのをノンビリと待って。

チャージアップしたバッテリーを繋ぎタイヤの空気圧を整えて。

セルを回すと、コイツは機嫌良く一発で冬眠から目覚めた。


おはよう、セロー。 今年は思ったより早く、その時が来たよ。


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予想気温をスマホで眺め、MA-1を羽織り首にバンダナを巻く。
焦ることは無い。今日は散歩に行ける、それだけで十分さ。


どうせ山は雪融けグズグズ。峠越えの無い南の田舎道かな。
何処へ行こう、って決めない、気ままなランブリング。


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ばたたた、ぱたたた、アハハ、裸足で駆けるようなトラクション。

少し強い南西の風に、軽飛行機のように揺られるけれど。
それすらも、嗚呼セローってこうだったよね・・・って。

そよぐ春の匂い、嬉しくて、楽しくて、微笑みながら。


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ええっと・・・この道って結局、ドコ繋がるんだったっけ。

ダートに入る気が無くても、道草のクセは変わらない。

谷あいの山間は古い雪。もうスッパネで濡れてもいいや。

服もバイクも、みーんな帰ってから洗えば済むことさ。


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こっから先は止めとくかな、って小さな公園でブレーク。
これ以上走ると麓の自販機で買った缶コーヒーが冷めちまう。

日なたのアスファルトにアグラかくと、二枚履きのパンツ越しに
ほわりとお尻が暖まる。


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急峻な流れが轟轟と音を立てる川の畔、早い午後。
積まれた小高く白い山を眺めていて、ふと蘇った声。


「上はセーターにスキーのヤッケ、下はジーパンにスキーの
ズボンを履いて来い。マフラー巻いて、靴はスノトレな。」


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細かなことは覚えていないけれど、さっき親爺が開いていた
モト・ライダー誌にはパリ~ダカール・ラリーの記事があった。

その次に記憶しているシーンは、その時未だ「雪まつり」の
雪像を壊している最中の、小岩井まきば園。


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・・・だから、あれはきっと2月の下旬のことだったのだろう。

突然やって来たバカ陽気な日曜、春の予兆の強い陽が照って
濡れたアスファルトのきらめきが瞳を貫き、キラキラと眩しい。


牧野の雪原を眺めた後、親爺は何を思ったか路肩の下りから
勢いをつけ、それを突っ切り始めた・・・なんとベルーガ80で!


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いま思い返しても、おかしい。いや、12才の自分から見ても
それは奇行にしか見えなかった。20cmはある重い深雪。


「おい、きつね、黙って観てないで、後ろから押せよ!」


腹を着いて虚しく空転するばかりの白鯨を、雪野原の向こう
遠く見えるレストハウスまで、小一時間はひたすら押した。

あまりに暑くてヤッケを脱いで、途中でセーターも脱いで。


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やがてどうにか建屋にたどり着いた刹那、親爺は恥ずかしい程
大きな声を立てて笑った。


「やっぱりムリかあ。きつね、腹減った。ジンギスカン食うべ。」


鉄板の上で音を立てる羊肉をつつきながら、親爺は呟く。


「今年のパリショーに、タイナイライって砂漠突っ切れる様な
バイクが出たそうだ。名前は変だけど、あれカッコいいな。」


XT600Z TENERE。 確かにタイナイライ、とルビを振ってあった。


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`83年に俺はまだ12才だから、親爺はもう49才だったことになる。
でもあの時のことって・・・思い出す都度笑っちゃうのね。

「あの頃でもまだトーチャン、男の子だったんだな」って。

「結局は自分が、その後を継ぐ形になっちゃったんだな」って。

延々と砂利敷きが続く東のまっすぐな畦道をスタンディングで
飛ばしながら、この間の彼岸を思った。


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テネレは、ムリだよ。170cmも無かったトーチャンと岩手の山では
アイツはデカ過ぎるもの。

このセロー、どうだい?これこそ親爺が望んだ理想のバイクじゃ
なかったかい?


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俺はトーチャンが叶えられなかった遊び・・・景色を、道を、
自在に縦横無尽に、堪能していることになる・・・のかな。


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「もしも体調さえ良かったら、今年はスコルパをもっと出そうよ。」

出がけに立ち寄った隠れ家で、師匠・へーさんは笑った。


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「ブログ読んでると、林道行きは過激な方へ向かってるのが
少し心配。単独行はヤバいからさ、トライアルで遊ばない?」


昨年のイーハトーブ・チャンプに微笑まれたら、頷く他にない。
それもまた永く、親爺の夢の舞台だったのだから。

とーちゃんが生きていたら、へーさんに逢わせてみたかったな。


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ファンティックを愛しシャフトドライブ機を贔屓にする一方で、
師匠が復帰へ向けて手を掛けているのは、希少なSDR200。

繊細なトラスのスイングアームを眺めていたら、アタマの隅で
アッカンベーする親爺のイタズラ顔が浮かんだ。


「逢わせたかった」? いや、「引き合わされた」のだ。親爺に。



そうかい?いいさ。 文字通り「仏様の掌の上」で、遊んでやろう。


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アウトバーンを静かに疾駆する黒い弾丸、旧タイプのBMW。

或いは陽光のアウトストラーダを矢のように飛ぶ、モトグッツィ。

「へへん・・・デカい方だけは、オヤジの釣りには乗らないよ。
今度は俺の方から、アッカンベーを送ってやるよ。」


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黄昏れ前にアジトへ戻ったきつねは、寒の戻りの日々の間に
充電ハーネスを作り直したバッテリーを繋ぎ、スポーツスター
起こすことにした。


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地響きにも雷鳴にも似た野蛮な轟き。コイツを選んだのは100%
自分だけの意思、自分だけの価値観だ。

「今度のハーレーはホンダの250じゃねぇ、ホンモノか?」


傍らで埃を被ったベルーガの方から、また声なき声が聞こえる。


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草葉の陰から、うるせぇな・・・目を細めて笑ってんじゃないよ。
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テーマ : バイクのある生活
ジャンル : 車・バイク

tag : もの思い セロー 彼岸 冬眠明け スポーツスター スコルパTY-S125F トライアル

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No title

愛車達の冬眠明けおめでとうございます。
SDRは20年近い昔バイト仲間が乗っていましたが今になって超気になります・・
乗った事無いので走りは想像しか出来ませんが、エクステリアデザインだけでも十分魅力的です。スイングアームまでもトラス構造とは!今まで知りませんでした。
親父様とのハートウォーミングなエピソードにホッコリしました。やはり誰しも親の血を引き継いでるんですよね(*^-^*)

ハックニー軍曹さんへ。

>SDR
自分もSRX4や6を長く愛用した身なんですが。
その眼を以てしても、SDRは凄いですよ。
デザイナーとエンジニアのワガママの塊で、
その点に関しては大好きなR1-Z以上。
「こんな工芸品レベルのこだわりが量産に
乗せられた時代だったんだなぁ」としみじみ。
いま造ったらあの値段で出せないでしょうね。

「出来上がったら乗ってみる?」とお誘いを
受けていて、今からワクワクしています。

>誰しも親の血を引き継いでる
趣味や職業というジャンルに限らず俯瞰すると
どの子も「親の観ていた・やっていた何か」で
どこかひとつ、必ず親を越えているものがある。

先日、芸術関連のヒトにそんな話を聞きました。

三つ子の魂ナントヤラ、という言葉もあるけれど。
幼い頃、育てられる間に刻まれたものが根付く。
ウチはその典型だったんだろう、と感じますね。

No title

もうすっかり春の陽気・・というか日によっては暑いくらいですね。
ウチの父は寡黙で一緒に遊んだ記憶ってあまり無いんですが、バイクのメンテナンスしているところを見ていたり、自転車の直し方教えてくれたりとか、ああいうのが二人の間ではある種の遊びだったのかもなあと。
父がいないときにこっそりバイクのエンジンかけたら、近所の人に聞かれてバレたこともありましたっけ(^^;。(怒られはしませんでしたが)
そういう意味では、自分の性格も趣味も父親譲り・・と言えそうな気がします。

琢磨呂さんヘ。

今回の文を書きながら、ふと思ったことなんですが。

ウチは昭和の家系には珍しく、全くと言っていい程
スポーツに関心がない環境だったんですよ。
母方はみんな熱血野球少年ばかりだったのに、
共通した趣味は結局スキーだけだったなぁ・・・。

他所の家庭なら親子でキャッチボールするところを
ウチは自転車連ねてサイクリングしたり原付二種に
タンデムで出掛けたりする事で埋めた気がします。

これは以前にも書いた事ですが、自分にとって
このベルーガって未だに「親父のモノ」なんです。
存在的に大きく、怖くて乗っちゃいけないような。

だから俺自身は現役時代から一度もエンジンを
掛けた事が無く、キーを手に乗せたのすら一昨年
本家から引き取った時が初めてだったんですよ。

ところで琢磨呂さん、バイクには乗らないの?
傍目にはかなり不思議に見えるのですが・・・。
プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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