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ものおもい。





この作り手自身が歌うセルフ・カバーを初めて耳にしたのは、
積丹半島の付け根から小樽を目指して走るレンタカーの中。


愛車以外のクルマで独り旅をするのは初めてのことだった故
「ドライブのBGM」にまでは想いが至るはずも無く。

函館を出て以降聴いていたFMが遂に「NHK浪曲アワー」の
一択に絞られ耐え難くなった末、岩内町のGEOに駆け込み
慌てて数枚買い込んだCDのひとつが、彼のセルフ・ベスト。


きつねにとって`90年代はまんま20代にモロかぶりだから、当時
B-ingサウンドを支えた彼の作品は見事に外れナシのツボ。

その中でも連なるトレーラーの群れを追いながら左手に水平線を
眺め続けて聴いたこの曲には、ついつい風景が滲んでしまった。


発表当時は化粧品CMタイアップもあり毎日の様にTVから流れる
「誰もが知るヒット・ナンバー」だったけれど。

大黒摩季の手によるリリックは、明るく前向きなタイトルやサビの
言葉では想像もつかない、心臓をドツかれるほど切実で深いもの
だったことを、この時初めてきつねは知った。


根が不器用な純情では勝ち目のない恋、稚拙な経験で挑む賭けに
等しい駆け引き・・・そして招く、知れ切ったエピローグ。

夜通し泣き明かして迎えた朝、しかし赤く腫らした目で主人公は
空に向かい笑って見せるのだ、無理にでも。

報われない相手と知っていながら、真心を捧げずにいられない。

心のどこかに「打算の無い愛情を注ぎ続けたなら、いつか」と
願う本音までは、裏切ることが出来ないから。

恋心はそういうものと、きつねは知っている。胸の痛みと共に。



~咲き誇れ 愛おしさよ  新鮮な 笑顔で 飾ろう
輝いて 抱き締めて  濡れて光る 時代の 砂

咲き誇れ 愛おしさよ  艶やかな 強がりを 笑おう
心まで 演じきれない  蒼い瞳 汚れる前に~


好いたホレたな浮世の色恋沙汰には興味無ぇよ、ってか。

否、対象の視点を変えりゃあ旧式車のオーナーには皆
当てた左手の胸中に覚えがあるんじゃないか?と思うよ。


センセーショナルなデビューを飾り、世から「時代の寵児」と
チヤホヤされて有頂天の神輿に担がれたものが、しかし
「次のブーム」の到来と共にアッサリ見切られてしまう悲哀。


「コイツこそ本命」。「維持して行ける限り愛用したい宝物」。
「コツコツ直しながら共に歳を取る末永い付き合いこそ美徳」。

ところが、十年~二十年と月日が流れるにつれ部品の供給が
怪しくなって「産みの親からも見放されたか」と溜め息をつき。
そこに追い打ちを掛けるかのような「オールドタイマー増税」。


歯を食いしばり耐える。「馬鹿野郎、てめぇら俺のマシンと絆を
銭勘定で天秤に掛ける気か?『愛着』って言葉を何だと心得て
やがる!」と、秘かに毒づきながら。

時の砂という踏み絵に苦虫噛み潰し、絞られたガラスのフチに
貧しくささやかな両足踏ん張り、下の器へ落ちまいと粘るのだ。


単車乗りでなくとも誰もが知る人気者、「モンキー」の姉妹機
だったお陰でウチの`80年式ゴリラは死に絶えずに済んだ。

スポーツスターも同じく、XL1200S専用の部品に拘らなければ
おそらく日本からガソリンが尽きる日まで生き永らえるだろう。

対するNAロードスターや225時代のセローについてはマツダや
ヤマハの企業姿勢に対し、感謝と敬意を抱かざるを得ない。

もし供給が途絶えても社外の汎用品でどうにか出来るパーツを
除き、未だ「走る為に必要な重要部品」を作っているのだから。


両社の両車に対するスタンスには、実は共通する事項がある。

ロードスターミーティングやセローが集まる大規模イベントには
必ず開発企画に関わる社員が足を運んで耳を傾けているのだ。

通称「ユーノス」ことNAロードスターを延々維持する乗り手には
過去製品のどこに魅力を感じ、未来に何を望むのかを訊く。

ヤマハは「セロー」というブランドに対する強いこだわりを持ち、
故に225から250へチェンジした際に切り捨てたものが何なのか
ユーザーの声を重ねて誰よりも熟知している。


時を経るにつれ緊迫する一方の規制やコストとラインナップで
新たに造りたくても造れない栄光の軌跡を遺している持ち主へ
敬意と融通を取り計らってくれた「意気で粋なメーカー」なのだ。


~咲き誇れ 愛おしさよ  新鮮な 微笑で 泣こう
わたしには 「永遠の月」  世間には 「時代の砂粒」~


時代遅れな流行りの産物・・・と、笑いたければ笑えばいいさ。

だけどお手軽なネット検索では横顔にすら触れることの出来ぬ
「乗って暮らして初めて分かる魅力」、その輝きや個性を貴方は
一生知らずに終わるのだろう。

「オープンカーは屋根の無いクルマだと知っている」では不合格。

「実際に乗るとオープンカーって、多分忘れられない体験になる」。

そう語れる人は、もしかするとそこから車好き/バイク好きの世界に
踏み込むことになるかもしれない。

二次元のバーチャルでは、時に髪をかき乱す季節の風の匂いも
心を丸裸にして解き放つスリリングな加速音や横Gも得られない。


「付け焼刃の生半可な情報で知った気になって語ってくれるなよ」。

自分の愛機に対してそう感じているが故、逆に謙虚なことも思う。

「よく分からぬ車種や機種に対して、乗るまで語ってはいけない」と。

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テーマ : ひとりごと
ジャンル : 車・バイク

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プロフィール

狐ヶ丘 紺之介

Author:狐ヶ丘 紺之介
1970年生まれの乗り物好きな中年ホンドギツネ(オス)。
クルマもバイクも好きなのに、精神構造が基本アナログ。
四輪はM/T派、二輪はキャブ派という典型的な昭和男。

ニンゲンに化けたは良いものの21世紀の流れに乗れず、
世間と森の境目辺りでひっそりブログを綴っております。

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