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synchronicity。 ~非合法時代の悦楽~







きつねはカラオケ屋に備え付けられたようなタンバリンや
カスタネットしか、楽器を扱うセンスが無いんだけれど。


このバーサス・セッションのグルーヴ、知っている。


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あの頃・・・タイヤがワンシーズンも保たないほど狂っていた
199X年、秋・・・。


俺のゼファー750も、先輩「魚屋けんちゃん」のXJR1200と
たまたま全く同時期に同じGT501に履き替えていたから
演じられた、一世一代奇跡の大バトルだった。


但しそれは、「お互いの腕前を信頼し切っていたからこそ」
の名舞台だったんだけどね。


俺もけんちゃんも、大型4発を手にする以前の愛車は同じ
SRX-4(俺のは二本サス最終のⅢ、彼のはモノサスのⅣ)。

終点のT食堂でメットを脱いだ途端、二人共気が振れた様に
大笑いしながら力いっぱいの握手を交わした。


「アソコまでマジせめぎ合うとヤバいって!命惜しくないの?」


いかに新品とはいえツーリング用バイアスのアローマックスが
俺のもケンちゃんのも端まで奇妙なケロイドの表情となった。


「アンタら余程のバカかホモか・・・ヨレた鉄フレームの単車で
150越えて横並びのまま大橋抜けるキ印は初めて見たぜ。」



格下排気量とは言え、振り切られるまいと全力で追走した
自分自身、後方から迫った常連に呆れられるよりも前から
「それ」を分かっていた。


「お前がそう来るなら、俺はこのラインで振って行くぜ?」

「了解。ブレーキはココからココまででギア一ヶ落として
90辺りで入ってよ、ガバッと寝かせてクリップはアレな?」



二人揃って在籍していたツーリングクラブの女性から、ヨメを
もらうまで「常連中単気筒最速」と謳われたけんちゃん。

そして逆にヨメ貰い損ねたヤケクソで極上のSRXを手に入れ
その座を継いだのが、きつねだった。


「タイトコーナーでエンブレのシフトロックを使うところなんか
背格好がソックリなせいもあって、気味悪いほど似てる。」



時に大外から、或いは軽い車体を活かしインを差しながら
こちらをかわし抜き去る常連に、以前から指摘されていた。


「アイツならココで絶対こうやってこんな感じでココを攻める」。


この感覚を極めると100km/hOVERの領域でシンクロナイズド
スイミングの如きエモーションを得られる瞬間があるのだ。


あの時、確かにきつねは見た。ハイスピードのまま狭まる視界の
真ん中、けんちゃんの背中に寸分違わぬ「コンマ数秒未来を走る
幻の俺」の姿を。

10年以上にも渡った峠の山賊(但し認定枠B級)暮らしの中で
ソレと同じ体験を得る機会は、記憶するうち3回のみだと思う。


如何に25kmの区間を信号ナシで結ぶ岩手ならではのルートとは
言えど、その稚拙でささやかな経験の先に「感じ得る世界観」。


例え舞台がスポーツでも音楽でも、腕ッ利き同士の競り合うところ。

「その時その瞬間同じ目的のためにソコに立った奴にしか分からぬ
聖域の空気が張られる」
、ということ。


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俺は誰かに胸を張れるようなゴリッパな人生とか褒められるような
お行儀の良さなんて、元来持ち合わせちゃあいないけれど。


突破者同士が人生と生命をギリギリまで競り合わせたヒリヒリな
瞬間の向こうに見てしまうエクスタシーの端に、少し触れた事が
ある・・・まあ、それだけのことさ。


スポーツに関しても音楽に関しても丸きり門外漢な、きつねメ。

でもだから、知ってる。「ゆるいぬるい一択」の人生では生涯
知り得ることのないだろう、「生き甲斐の究極」の世界観
を。


砥がれたナイフ・エッジの刃を渡るトキメキは一夜限りの相手との
セックスよりも、数等ヤバいシロモノだから。


アレは知らなきゃ知らない方が長生き出来るんじゃねーかと思うよ。
いちいちリスクにビビるようなネット情報頼りの御時勢だしさ。


俺は意識が何年も三途の川の向こうへトンだまんまベッドの上で
寿命を伸ばす行く末なんか望んでないから、世間の価値観なんて
よく知らないんだけれどもね。
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