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Good-Bye Scorpa。 ~さようなら、蟷螂婦人~









「君なりに熟慮した末、手放す決心を下した心中は分かる。
だからあんまり、気を重くして欲しくないんだ。」


相応しい引き取り手を見つけるまで預かる、と続くトライアル
師匠へーさんから届いたメールの文面に、篤い思慮を感じた。

長く愛読して下さっている方やリアル・バイク仲間の中には、
たぶん今月冒頭の記事に「おや?」と感じた人もいると思う。

実はきつねメの許には3年前から、既に桃色ナンバーの
単車が一台潜んでいたのだから・・・。


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おそらく輸入開始後、わりと初期のロットで盛岡に嫁いで来た
スコルパ/ヤマハ TY-S 125F。

セローのパーツを発注しに訪ねたバイク屋さんの片隅で偶然
見つけたコイツは、半ばバラバラのまま何年も眠っていた個体。

「近隣の小金持ちが気まぐれで手にしたものの、余りに乗り辛く
早々に放置しちまったんだ。兄ちゃん、コレに興味あるのか?」



TG スコルパ


当時のきつねメは、完調整備での納車を約束して提示された
コイツの価格がどれほど破格なものか、実は知らずにいた。

なにしろその店主自身「ウチの客にトライアルやるモノズキな
ヤツは他に一人も居ない」とキッパリ言い切ったのだから。

そう、「売る方も買う方も値打ちが分からない(!)」という
ネット全盛の21世紀上奇跡の成り行き(笑)で成立した
類稀な取り引きだった。


TF スコルパ


トライアルに興味があるなら教えるから、一緒に遊ぼう。」

「但し『安いから』と`80年代までのトラ車は選ばないでね。
廉価で手にした分だけ後々要らない苦労を背負うから。」


各パーツの劣化と部品の入手、そして古い設計故の重さ。
師匠・へーさんの御託言は、確かなアドバイスだったと思う。

何せコイツと来たら感覚的に180°近くハンドルが切れる上、
ドライウェイトなんかスーパーカブ並みに軽いのだ。


TH スコルパ


そしてイーハトーブ・トライアルのクラス・チャンプに率いられ
「本当にバイクを操り切ることの難しさ」を教えてくれたのも、
またこのスコルパだった。


かつては長年通ったホームコースで毎週末マージンとタイヤと
タイムを削って腕を上げて来た筈の自分が・・・しかしたった
125ccの原付ですら、扱い切れないのだ。

※「嘘つけこのヘタクソ」と嗤うなら、コイツで八の字を書いてみなよ?
 四畳も無いスペースでこなす「トラ車のフルロックターン」がどれ程
 難しいかは、自分が挑戦してみないと分からない領域だもの。


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そのポテンシャルを野に放てば、林道と間違って迷い込んじゃった
ハイキング・コースのてっぺんまで登頂する機動力を備えている。

但しソレは、4スト空冷2バルブOHC125ccという非力なユニットを
全力で低速域にのみ振り切って得た能力。

つまるところ特大のリアスプロケが物語るように「究極の単能車」。
トライアルというシーンにだけ適応する局地戦闘機」でもあった。

公道用として登録出来るオートバイの中、出荷時装着のドライブ
スプロケットが標準で9T(!)というバイクは相当少ないだろう。


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取り扱い説明のpdfファイルに「65km/h以上で走り続けると
エンジンが焼きつく為、使い道に応じ最終減速比を調整して
下さい」
と明記してあるシロモノ。

そう、正直な話、50cc以上に使えない125ccだったんである。

もう長きに渡りセロー225で林道徘徊を楽しんでいる身からこそ
割り切りの塊で自転車の如く、身軽に山野を駆け巡る機動力を
思い知らされもしたけれど・・・。

フロントのスプロケを13Tに取り換えても尚 車庫から積極的に
連れ出して自ずから進んで練習に出向く気にはなれなかった。


TI スコルパ


あまりジャンルの詳細を知らぬ市井のバイク好きから一括りに
「山バイ」とされるトライアル車とトレール車、モトクロッサーや
エンデューロ・レーサー機、或いはそのレプリカたち。

コレも各々が乗って実地に出向かなければピンと来ないかも
しれないけれど・・・オンロードに於けるレプリカやツアラーと
アメリカンぐらい、みんな全く違う性格の持ち主


その中でも最も普段乗りに適さないのがトライアラーだ、と
きつねは痛感させられた。


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スコルパ社倒産後、そのブランドをシェルコに買収された後も
入門機として人気の高かったTYS125fは継続生産となった。

ただ・・・伝え聞くところによると、現行エンジンはかつての
ブラジル工場から供給された物とはギアレシオが異なって
いるために、「純スコルパ」を探すマニアもいるのだそうな。


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直近の決断理由を挙げれば「四十肩」になるけれど。

長年の肉体労働由来な椎間板/頸椎ヘルニアによる
左腿の痺れ、15年間楽しんだスノボ生活で擦り減った
各関節の軟骨、右十字靱帯断裂で金具の入った右膝。


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家を出たらガレージへ帰って来るまで「空気イス状態」の
トライアル車を乗りこなすには、チャレンジが遅過ぎた。

スコルパが悪いのではなく自分が耐えられなかったのだ。

あちこちがくたびれた今の俺に必要なのは皮肉なことに
より「汎用機」へ近い、Dトラッカーの方だったんだよ。


せっかく活躍の場へ復帰させられた、と思ったのに・・・
持って生まれた素性の良さを活かしてやれず、ごめんな。





指定休の都合さえ合えば、毎年の様に見学に出向いている
出光イーハトーブ・トライアル

TYSを生んだこの大会を目にする度、ことにセローを手に入れ
林道を走り出して以降一層強く、一人の単車乗りとしてずっと
思っていたことがある。

「どこまでがバイクの性能で、どこから乗り手の技量なんだ?」

ごく短い期間・ごく僅かな体験だけで終わってしまうけれど。
ウチのスコルパは、その境界をきつねに明確に教えてくれた。



さよなら、混血の美しきコンペティッター。次に会う時はきっと
相応しいイーハトーブという舞台で、キラキラと舞っておくれ。

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